日銀のマイナス金利政策の発表により、瞬間的に株価は上昇しましたが、その後急落しました。一時は2万円を超えていた日経平均株価も、約1年4カ月ぶりに1万5000円を割り込んでいます(2月12日終値)。
私を含め、株式投資をしている人間にとってはあまり嬉しくないニュースです。2015年10~12月期の国内総生産(GDP)成長率がマイナスに転じたことも発表されましたし、日本経済の先行きはあまりよくありませんね。
株価低下時こそが株の買い時
しかし、株価が下がっているということは、今から株を買う人にとっては有利な状況とも言えます。株価の下落=安く買えるということですからね。
株式投資では株価の変動でも利益を得られますが、株主優待も魅力的です。
ANAマイルを貯めているマイラーにとっては、やはりANAホールディングス(全日空)の株主優待券が狙い目でしょう。
株主優待券はヤフオクや金券ショップ等でも購入することができますが、株主になってしまう方がお得に手に入れることができます。株主優待券は株を保有しているだけで貰えますからね。
ANA株主優待券のメリット
ANA株主優待券を使って購入した航空券は、価格が半額なのも嬉しいですが、なにより急な予定変更にも対応しやすいのが最大のメリットです。基本的には手数料無しで便変更が可能です。
一方で、旅割等の早期割引で購入した航空券は、原則として便変更はできず、キャンセルする場合にもキャンセル手数料が発生してしまいます。
株主優待運賃と旅割との間には、価格差だけでは分からない大きな差があるのです。
すでにマイルが大量に貯まっているというマイラーには株主優待券は不要かもしれません。しかし、まだマイルを貯め始めたばかりで大量保有には至っていない私のような人や、SFC修行を始めている私の妻のような人にとっては、株主優待券はとてもありがたい存在です。
マイルがそれなりに貯まっているとしても、子供の航空券にまでマイルを使うのはあまり効率的ではありませんし(マイル特典航空券は大人も小児も同じマイル数が必要です)、運賃次第ではマイルよりも株主優待券を使った方が実質的にはお得ということもあります。
https://rikei-miler.com/mile/post-1650
ANAの株主優待券は、状況に応じて上手く使ってあげることで、絶大な威力を発揮してくれるのです。
現在のANAホールディングスの株価
ANAホールディングスの株価は2月1日時点では1株350円を超えていました。それがいまや282.9円(2月12日終値)まで低下しています。たった10日程度で約20%も下落したことになりますね。20%OFFセール開催中といった感じでしょうか。
ANAの株式を取得すると、4,000株までは1,000株あたり1枚の株主優待券が貰えます。つまり、1,000株持っていれば1枚、2,000株持っていれば2枚、3000株持っていれば3枚、4000株持っていれば4枚の株主優待券が貰えます。
なお、4,000株以上になると、1000株あたり1枚は貰えなくなり、1万株までは2,000株ごとに1枚増、100万株までは4,000株ごとに1枚増、100万株以上では8,000株ごとに1枚増になります。
<株式数と株主優待券発行枚数との関係>
所有株式数 | 株主優待券 発行枚数 |
1,000株~1,999株 | 1枚 |
2,000株~2,999株 | 2枚 |
3,000株~3,999株 | 3枚 |
4,000株~9,999株 | 4枚+4,000株超過分 2,000株毎に1枚 |
10,000株~999,999株 | 7枚+10,000株超過分 4,000株毎に1枚 |
1,000,000株~ | 254枚+1,000,000株超過分 8,000株毎に1枚 |
以上のように、4000株を超えると割が悪くなってしまうので、1人あたりの保有株式は4,000株以下にするのが効率的です。もし、株主優待券が4枚以上欲しいのであれば、株主名義を分けて4,000株ずつ保有する方がお得になります。
例えば、夫婦で4,000株ずつ(計8,000株)保有すれば8枚の株主優待券を貰えますが、1人で8,000株保有すると6枚しか株主優待券は貰えません。
なお、ANAホールディングスの権利確定日は3月と9月に設定されているので、株主優待券を獲得する機会は年2回あることになります。株を1年間保有し続けた場合は、上記表の2回分(つまり、2倍)の枚数を貰えます。
株主優待券の取得にはいくら必要?
現時点の株価でANAホールディングスの株を1,000株取得しようとする場合、282.9円×1,000=28万2900円必要です(手数料別)。株価急落前までは35万以上必要だったと考えると7万円近くお得です。
資金に余裕がある方であれば、4,000株を282.9円×4,000=113万1600円で取得することもできます。4,000株あれば株主優待券は4枚貰えるので、2人で飛行機に乗る場合の往復分が賄えます。
しかし、安易に株を大量購入してしまうと、株価がさらに下落した場合の損失も大きくなるので注意が必要です。株価は自分の都合のいいようには動いてくれません。これから株価が上がるのか、それとも下がるのかは、株式投資のプロでも予測が難しいものです。
しかし、株主優待に関しては、株価下落のリスクを回避して獲得できる裏ワザが存在しています。「クロス取引」と呼ばれる手法です。
クロス取引とは
クロス取引は、同一銘柄に対して買い注文と売り注文とを同時に行って取引する手法です。具体的には、「現物取引の買い」と「信用取引の売建」を同時にやっておいて、権利落ち日(株主優待の権利が確定した次の日)に「現渡(げんわたし)」という手法で決済します。
クロス取引のメリットは、「買い」と「売り」の両方のポジションをとるので、株価が上がっても下がっても損失が発生しないところにあります。
例えば、取得後に株価が下がった場合、「買い」ポジションについては損失が発生しますが、「売り」ポジションでは逆に同額の利益が発生します。同様に、取得後に株価が上がった場合、「売り」ポジションについては損失が発生しますが、「買い」ポジションでは同額の利益が発生します。
このように、「買い」と「売り」で利益と損失が相殺されるため、株価がどのように動こうと、損失は発生しないのです(厳密には手数料や金利がわずかに発生します)。
当然、利益も発生しませんが、株主優待に限っては別です。株主優待は、権利確定日の取引終了時点で現物の株式を保有していれば(つまり現物の「買い」ポジションがあれば)貰えます。
このため、クロス取引をすれば、株価の値動きによる利益や損失は発生しないけれども、株主優待券だけは確実にゲットできるのです。
ちなみに、クロス取引の「買い」には配当金がつきますが、「売り」の配当調整金(配当金相当額のマイナス)によって相殺されてしまうので、配当金による利益、損失もありません。
クロス取引の注意点
クロス取引では、通常の取引と違って注意してもらいたい点がいくつかあります。
以下で解説していきますので、取引前にしっかり理解しておきましょう。
1.信用取引できる証券会社を選ぶ
株の取引をするためには、まず証券会社に口座を開設する必要があります。しかし、全ての証券会社で信用取引ができるわけではありません。信用取引が可能な証券会社は限られているのです。
クロス取引をしようとする場合には、信用取引ができる証券会社なのか、しっかりと調べてから口座を開設しましょう。
信用取引が可能なオススメ証券会社は、「SBI証券」と「カブドットコム証券」の2つです。私は10年前くらいから、ずっと「SBI証券」を使っています。「カブドットコム証券」は信用取引の銘柄が多い証券会社として知られていますので、ANA以外の株式もクロス取引してみたいという方にはオススメですね。
2.信用取引には種類がある
信用取引には、「制度信用取引」と「一般信用取引」の2種類が存在しています。制度信用取引は注文してから決済するまでの期間が6ヶ月に限定されていますが、金利が比較的安いというメリットがあります。一方、一般信用取引は、決済までの期間が原則無期限ですが、金利は制度信用取引と比べると高めです。
こうしてみると、株主優待取得のために短期間で信用売りを行う場合、金利の安い制度信用取引を利用した方がよさそうに思えます。
しかし、制度信用取引には、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」というとんでもない落とし穴が存在しています。逆日歩とは、売り注文が増えすぎた際の株不足によって発生する特別な金利であり、通常の信用取引の金利とは別に必要になります。
通常の金利だけであればわずかな額なのですが、逆日歩は1日ごとに1株あたり数円単位で発生することがあります。例えば2015年の9月末のANA株には、1株あたり4円の逆日歩が発生しました。4,000株の信用売りを抱えている場合、たった1日で4×4,000=16,000円の損失が発生しています。株主優待券(約5,000円相当)が4枚貰えたとしても無視できない損失額ですね。
この逆日歩を回避する方法が「一般信用取引」です。一般信用取引では、逆日歩は発生しません。クロス取引には迷わず一般信用取引を選択すべきなのです。
3.一般信用取引には在庫切れがある
ここまで説明してきたように、クロス取引のメリットは非常に大きなものです。だからこそ、権利確定日が近づくと一般信用取引したいという人も増えてきます。すると、人気銘柄については一般信用売りの在庫が枯渇してしまうことがあるのです。ANAホールディングスの株もその例外ではありません。
早めに購入しておくのも1つの手ではありますが、一般信用売りにも通常の金利はかかってきます。つまり、売りポジションを維持すると、その期間が長いほど少しずつ損失が発生します。売りポジションを抱える期間はできるだけ短い方がよいのです。
では、どうすればよいかというと、一般信用売りの在庫状況をこまめに確認して注文時期を見極めるしかありません。証券会社の取引ページでは信用取引売りの在庫状況がどうなっているかを確認することができます。権利確定日の1ヶ月前ぐらいから在庫状況を確認しておけば、ほぼ確実に在庫切れを回避できるでしょう。
まとめ
- ANAの株主優待券取得には株価急落中の今がチャンス
- さらなる下落のリスクを回避するためには「クロス取引」が有効
当然のことですが株式投資は自己責任です。思わぬ損失を発生させないよう、自分自身でしっかりと情報を吟味してから始めてくださいね。